みなさんは車検を受けていますか?受けていますよね。
では人間ドックは受けていますか?受けていない人のほうが多いのではないでしょうか。
消化器内科である私が診療するうえで気を付けていることを含め、消化器の病気で死なない方法について解説します。
結論
結論からお伝えします。
消化器の病気で死なないために必要なことは、毎年人間ドックを受けることです。
医者の仕事とは何か
そこそこ大きな病院の勤務医という前提で話します。(開業医はまったく目指すところが違います)
大きな病院では、開業医からの紹介患者や救急搬送されてきた患者の対応をすることが求められています。
放っておいたら命にかかわるような病気が潜んでいないかを確認して対処する。これが最重要目標です。
そのような病気は消化器内科でいえば、各種のがん、出血性の胃潰瘍、重症の感染症などです。
どのようなことを考えながら診療するのかを以下で解説します。
症状が出て見つかるのは進行がんである
医者側のもっている基本的な前提を解説します。
それは、「症状が出てくるようながんは、ほぼ進行がんである」「早期がんは症状がないことがほとんど」ということです。早期がんは、その時点ではイボのような存在なのです。(例外はあります)
胃がんや大腸がんが早期のうちに見つかれば、命取りになる確率はかなり低いです。多くの場合で根治が望めるでしょう。
しかし早期発見をするためには、まったく症状がなくても毎年の健康診断や人間ドックを受ける必要があります。
何も症状がないのに毎年高い料金を払って人間ドックを受けることに抵抗のある人は実際多いのではないでしょうか。しかし、絶対に死にたくないという場合には毎年のドックは最低条件です。
逆に言えば、症状があっても各種検査で問題がない場合は心配ありません。
がんを疑わせる症状
- 数か月前から食欲がなく、体重が落ちてきた
- 数か月以上前から便に血が混じっていたが放置していた
- 顔が黄色いことを周囲の人に言われたので受診した
このような訴えは危険であり、がんを疑い警戒すべきです。
医者には常識だが患者側はあまり知らない消化器内科のポイントとして、「がんや一部の疾患を除けば、ほとんどの症状はある程度放っておけば自然に治る」というものがあります。
症状が数か月も持続するようなものは、「放っておいても治らない疾患」である可能性が高くなります。
消化器内科的には、「放っておいても治らない疾患」として各種のがんや炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)、慢性肝炎などが該当します。
それ以外の疾患の例として感染症であれば、適切な対処をすることで解決することが多いです。
どのように診療するか
問診と診察で、ある程度注意すべき疾患を絞り込めます。
感染症のようないわゆる緊急で対応が必要そうな状況であれば緊急CT検査などを行い診断します。
急性の疾患ではなさそうだが「放っておいても治らない疾患」の可能性がありそうな際は、血液検査、CT検査、超音波検査、内視鏡検査などを考慮します。
あまりに状態が悪い場合、血液検査でいろいろな項目に異常値があらわれます。
腫瘍により消耗するため貧血、たんぱく質の数値の低下がみられ、肝臓まで腫瘍が転移した場合は肝機能障害などが起こります。
CT検査では、ある程度の大きさのある腫瘍であれば見つけることができます。何か症状を起こすような進行した腫瘍であればCTで見つかる可能性は高いでしょう。
しかし胃や大腸といった消化管領域の小さながんはCT検査では見つけにくく、明らかな腫瘍がなさそうでも完全に安心してはいけません。症状から腫瘍が疑われる場合は内視鏡検査をしておいたほうが安心です。
超音波検査は主に肝臓の疾患を疑う場合に行うことが多いです。
次に各種がんの特徴を説明します。
食道がん、胃がん
胃カメラで見つけられます。胃カメラを受けましょう。
よくバリウムとの精度を比較されますが、バリウムは隆起や陥凹をみて病変がないか判断するものであり、初期のがんで平坦なものは検出できません。国の検診はコストパフォーマンスも重視されているので、すべて見逃さないというようなものではないのです。よって、可能であれば胃カメラでの検査をお勧めします。
ピロリ菌がいる場合は少し胃がんができやすくなるため、除菌療法を行うことをおすすめします。
大腸がん
基本的には検診の便潜血検査(便を少量提出し、潜血反応という微量の血液の混入を調べる)を毎年受けていただき、ひっかかったら大腸カメラを受けるという方針で大丈夫です。
この検査はポリープがあるだけでも引っかかることが多く、臨床の場においてかなり有効なものと感じます。
肝細胞がん
肝細胞がんは、肝臓病のない人はほぼできません。あまり心配しなくてもよいです。
とはいえ近年は脂肪肝炎からの発がんが増加傾向なので、脂肪肝がある人は体重を適正に保つことが望ましいです。
何らかの肝臓病のある人は、普通は定期的に通院をして様子を見てもらっているはず。この場合は半年~1年ごとに超音波検査をしていると思われますので、それで良いでしょう。
膵がん
膵がんは慢性膵炎や膵嚢胞性疾患、膵がん家系がリスク因子となります。
膵がんは毎年ドックを受けていても手遅れの状態で見つかることもあります。
これまでに挙げたがんより明らかに進行が早く非常にやっかいながんであり、早期発見は難しいです。とはいえ、超音波検査で早期に発見できる場合もあるので検査は受けるべきでしょう。
まとめ
死にたくない場合、人間ドックを毎年受けましょう。
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